労災事故の損害賠償請求は?
労災事故の損害賠償請求
労働者が仕事中に事故や災害などに遭って負傷したり、病気にかかったり、さらにそのケガや病気が原因となって障害が残ったり、亡くなったりした場合、これを「労働災害(労災)」といいます。
労働災害に遭って怪我を負い、怪我の治療のために入院や通院が必要になった場合、被害者の方は治療に必要な費用や、入院・通院によって仕事を休む必要が生じ、収入が減少した分の補償などを請求することができます。
以下、主な項目を説明します。
治療関連費(治療費、通院交通費など)
治療関連費としては、災害によって受傷した怪我の治療費・入院費、また、通院に関る交通費などがあります。
労災が適用されれば、治療費や入院費のご負担はありません(但し、入院で個室を使用する際は、その室料は認められない場合があります)。
そのため、労災が適用されている以上、治療費や入院費を事業主に請求する必要はございません。
通院に関る交通費については、一定の場合(片道2kmを超える通院であって、お住まいの場所と同一市町村の病院に通院する場合等)には、労災から支給されます。
労災から交通費が支給されなくても、必要かつ相当な範囲の交通費について、安全配慮義務違反のある事業主に対して請求できます。
休業損害
休業損害とは、労働災害によって怪我を負った被害者が、入院期間、通院期間に仕事を休んだことにより、収入が減少した場合の減収分の補償です。
休業損害の計算に当たっては、事故前3か月の収入から平均賃金を割りだし、その平均賃金と医師が判断した休業日数によって計算されます(但し、休業期間が3日を超えなければ、労災からは休業補償は出ません)。
労災からは、事故直近の3か月の平均賃金の8割を休業補償として受給できます(例えば、平均賃金が1万円だったとしたら、1日あたり8000円となります)。
この労災の休業補償は、保険給付と特別支給とに分かれています。
保険給付が平均賃金の6割(前記の例では6000円)、特別支給が平均賃金の2割(前記の例では2000円)を構成しています。
この特別支給2割については、損害の補てんを受けたという扱いではなく、労働福祉事業の一環として特別な補償を受けたという扱いですので、労災から休業補償を受給していても、安全配慮義務違反のある事業主に対しては、休業補償として平均賃金の4割分(平均賃金額-保険給付額6割。前記の例では1日あたり4000円分)を請求することができます。
また、逆に、会社から休業補償を全額もらっていても、労災から休業補償として2割の特別支給金を受けることができます。
入通院慰謝料
入院・治療・怪我に対する慰謝料は、災害によって被害者が受けた精神的苦痛に対して支払われる慰謝料です。
入院・治療・怪我に対する慰謝料の計算は、入通院の日数によって決まります。
慰謝料は、労災からは出ませんので、安全配慮義務違反のある事業主に対して請求することになります。
後遺障害慰謝料
労災により後遺障害が認定された場合には、認定された後遺障害等級に応じて、後遺障害慰謝料を請求することができます。
具体的には、等級に応じて金額の請求が認められることが多いです。
逸失利益
労災により後遺障害が認定された場合には、後遺障害によって今後の労働能力の低下が認められ、それによって得られなくなったであろう収入を、いわゆる逸失利益として請求することができます。
この労働能力の低下は、特殊な事案を除いて、後遺障害等級に応じて労働能力喪失率が認められることとなります。
労災事故の慰謝料を請求するには?
労災事故については、労災保険から保険金を支払ってもらえるということをご存知の方も多いかと思います。
労災保険からは、
- 療養補償給付
- 休業補償給付
- 障害補償給付
- 遺族補償年金
- 葬祭給付
など、様々な補償を受けることができます。
しかし、労災保険の保険金では、慰謝料を補償するものは給付されません。
たとえ、労災の死亡事故に遭ってしまったときでも、その死亡慰謝料については、労災保険からは支払ってもらえないのです。
このような場合、労災事故の原因が雇用主である場合に、労働者は会社に対し、損害賠償請求をすることが可能となります。
会社と労働者との間には労働契約があります。
会社は、労働者を働かせる以上、労働者が安全に、事故に巻き込まれないようにしなければなりません。
このような義務を「安全配慮義務」といいます。
裁判例では、この安全配慮義務を、「労働者が労務提供のため設置する場所、設備もしくは器具等を使用し又は使用者の指示のもとに労務を提供する過程において、労働者の生命及び身体等を危険から保護するよう配慮すべき義務」と説明しています。
労災保険は、被った損害のすべてを補償してくれません。
適正な補償を受けるために、会社に損害賠償請求を検討します。
労災保険からの支給額は、労働災害で被った損害の補償として、必ずしも十分なものになるとは限りません。
怪我の治療などによって休業を余儀なくされた場合の休業損害や、後遺障害による逸失利益(本来は得られることができたと考えられる利益)は、その全額が支給されることはありません。
また、労災事故による精神的な損害に対する補償は一切ありません。
このような理由で、労災保険から実際に支給される金額と、適正と思われる金額には差が出てきます。
したがって、支給金額に納得できない場合には、差額分を会社に対して請求することが必要です。
上記のとおり、会社側が安全配慮義務を怠っていたような場合には、会社の安全配慮義務違反の有無を究明し、損害賠償請求をすることもできます。
安全配慮義務違反が認められるためには?
労災事故であれば必ず勤務先の会社が慰謝料を支払ってくれるわけではありません。
労災保険は、労働基準監督署の調査により、労働者が会社に指示された業務を行っているときに(「業務遂行性」といいます。)、その業務を行っていたせいで事故が発生した(「業務起因性」といいます。)ということさえ認められれば、その事故を労災事故と認め、保険金を支払ってくれます。
他方で、勤務先の会社が、その事故についての損害賠償責任を負うかどうかについては、単にこの業務遂行性と業務起因性が認められるだけでは足りず、その事故を防ぐために、会社として整備しておかなければいけなかった安全設備を、過失によって整備していなかったということ(「安全配慮義務違反」といいます。)等を、被害者が立証しなければなりません。
「安全配慮義務」の内容については、作業現場での指揮系統の在り方、被害者が行っていた具体的な作業の内容、事故現場の物理的な状況等によって、誰が、何を、どこまで整備しておかなければいけなかったのか、整備できていなかったことにやむを得ない事情はないのか、といった点で、事案ごとに千差万別であり、一つ一つ個別に判断をしていかなければならないものですので、分かり易い明確な基準があるわけではありません。
そこで、労災の死亡事故について、勤務先会社に対して、「安全配慮義務違反」に基づく損害賠償請求権として慰謝料などを請求するためには、このような「安全配慮義務違反」の有無、内容を事案に応じて具体的に主張・立証していかなければなりません。
また、会社の他の労働者が、業務中に故意又は不注意によって事故を発生させた場合には、会社は使用者責任として被害者に発生した損賠を賠償する責任を負います。
この場合、労災の死亡事故について、勤務先会社に対して、「使用者責任」に基づく損害賠償請求権として死亡慰謝料を請求するためには、他の労働者が負うべきであった注意義務の内容、その注意義務の違反の具体的な内容及びその注意義務違反と労災の死亡事故との因果関係等を事案に応じて具体的に主張・立証していくことになります。
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