建物の修繕は誰がするの?
賃貸しているアパートで雨漏りが発生した場合、風呂のタイルがはがれた場合、修繕は誰がしないといけないのでしょうか。
建物の修繕義務は?
民法は、原則として賃貸借契約の目的物(借家契約の場合は建物)の利用(使用収益)に必要な修繕は、賃貸人の義務としています(民法606条1項)。
そして、賃借人は、賃貸人がこの建物の保存に必要な修繕をおこなうことを拒むことができないとされています(同条2項)。
但し、現実にこの修繕が問題となるのは、①どこまでが賃貸人がおこなう修繕であり、どこまでが賃借人がおこなう修繕なのか、②賃借人か修繕をおこなった場合に、賃料と相殺をすることができるのか、もしくは賃貸人が修繕をおこなうまで賃料を減額することはできるか、といったケ-スです。
契約書で確認する
まず、この修繕をおこなうのは賃貸人、賃借人のいずれかの問題を考える場合、契約書でこの修繕に関して特別の約束があるかどうかを確かめる必要があります。
上記のとおり、建物の修繕は、原則として賃貸人の義務ですが、当事者の約束で、賃借人の負担とするとさだめることも可能です。
賃借人に不利な規定を無効とする借地借家法30条及び37条の対象に、賃貸人の修繕義務は含まれていないからです。
但し、約束があるからというだけで、建物の所有者でもない賃借人が、建物の修繕をすべて行わなければならないというのは不公平です。
そこで、明確に区別できるわけではないのですが、大修繕・中修繕・小修繕に分けて、建物の主要な構成部分(屋根、床、壁など)の破損の修繕を大修繕、水回りや設備(風呂やトイレ等)の修繕を中修繕、障子や襖の張り替え・交換などの修繕を小修繕と分けて検討することが一般的とされています。
このうち大修繕については、その修繕の規模・費用に鑑みて、原則として賃借人の負担とすることは許されないと考えられています。
また、中修繕についても、約束で賃借人の負担とすることができるとしても、通常、修繕費は賃料の中に含まれているといわれているため、賃料を高額に設定した上で、さらに修繕費まで賃借人の負担とする契約は、信義則(民法1条2項)や公序良俗(民法90条)に違反し無効とされる可能性があります。
修繕が必要になった責任が明らかな場合
また、この約束の存在や大中小の修繕部分の区別のほかに、その修繕が必要となった理由も考慮されます。
例えば、約束があろうとなかろうと、賃借人が過失で窓を割ってしまったり、ドアを壊してしまったりした場合、賃借人の負担で修繕を行うことに疑問をもつ人はいないと思います。
また、逆に、いかなる約束があっても、賃貸人の過失で建物を毀損してしまった場合は、賃貸人が修繕を行うことになります。
基本的に、約束や修繕部分の区別は、第三者の責任や自然災害等やむをえない事情で破損・毀損してしまった場合に問題となります。
以上より、まず実際に修繕の必要性が出た場合は、誰の責任でそのような修繕が必要になったのかを考え、責任の所在が明らかであれば、その者が修繕を行い、そのあとに、修繕が必要な部分ごとに、約束があるかどうかで、最終的に修繕を行う義務を誰が負うのかを判断することになると考えられます。
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