相続人であるAさんが、亡くなった父親の書斎を片付けていたところ、「全財産を慈善団体に寄付する」との遺言を発見しました。
息子であるAさんは何ももらえないのでしょうか。
遺言は有効
そもそも、相続人がいながら、財産の全部を相続人以外の第三者に寄付する遺言は、有効なのでしょうか。
遺言が無効となるのは、遺言能力のない者が遺言をした場合(満15歳に達しない者の遺言)、遺言が法律で定められた方式によらない場合、遺言が公序良俗に反する場合等があります。
本件において、特段このような事由に該当しない限り、「財産の全部を寄付する」との遺言も有効となります。
遺留分減殺請求ができる
被相続人が自らの意思により自由に寄付ができるとはいえ、相続人である息子Aさんには遺留分があります。
遺留分とは、被相続人が相続人に残さなければならない遺産の最低部分です。
Aさんが3人兄弟(相続人が子ども3人のみ)の場合、3人兄弟にはそれぞれ6分の1ずつ(計2分の1)の遺留分があります。
遺言によって遺留分を侵害されたのですから、Aさんを含む3人兄弟には遺留分減殺請求権があります。Aさんらは遺留分減殺請求で侵害された部分を取戻すことができます。
生前に寄付したら
では、父親が生前に財産を第三者に寄付した場合、相続人の遺留分はどのように考えたらいいのでしょうか。
相続開始前の1年間にされた贈与(寄付)は遺留分の対象となります。
また、寄付する側とされる側の双方が、遺留分権利者に損害を加えることを知って贈与したときは、1年より以前にされた寄付も遺留分の対象となります。