文化や習慣の違い(仕事の価値観・優先順位、言語、宗教等)を知っておく
外国人を雇用するに際して、それぞれ外国人の固有の文化、習慣を事前に知っておくことは大切です。
外国人は、当然のことながら、日本人とは異なる文化、習慣で育ってきています。
最も大きな違いは、使用言語(母国語)が異なることです。外国人雇用で、外国人労働者とのコミュニケーションをいかに図るかは、どの企業も真っ先に直面する課題です。外国人の日本語能力を採用時に十分確認する必要があります。
また、仕事に対しても、日本人とは異なる価値観・優先順位を持っています。
例えば、文献(「外国人社員採用・活用ハンドブック」株式会社ジェイエーエス)によれば、日本、中国、インド、ベトナムで、仕事に対する価値観・優先順位を比較すると、「仕事」の優先順位が1位なのは、日本のみです。中国とベトナムは「家族」、インドは「宗教」が1位となっています。すなわち、仕事を最優先させようとする価値観は、日本特有のものであることが分かります。
さらに、働き方のタイプも異なります。日本は、同じ職場で長く働くことを重視する「組織貢献型」。中国は、将来の独立起業を視野に入れながら働く「独立起業型」。インドは、IT技術などに代表されるように、専門性を高めることを重視する「スペシャリスト型」。ベトナムは、仕事よりも家族を優先する「一家団らん型」。
このように、国によって、その働き方は大きく異なります。
したがって、外国人を雇用し、一緒に働いていくためには、このような価値観の違いも理解しておくことが必要です。
日本語能力のケアは必須
では、このような外国人との文化や習慣の違いに、どのように対応すれば良いのでしょうか。
まず、言語については、採用時に、単に、日本語検定等、履歴書記載の保有資格のみで判断するのではなく、面接の現場で、日本語の筆記試験、口頭試験を行い、複数人の面接官で日本語能力をチェックすることが大切です。
これによって、一定レベルの日本語能力を持った外国人を採用することができます。
また、雇用後は、企業が、外国人労働者を対象に、日本語の社内研修を随時行う必要があります。自社の業務で必要となる日本語に絞って繰り返し教育をすると、学習効果が仕事に直接反映されるので有効です。
さらに、就業規則、作業マニュアル等、特に重要なもの、頻繁に使用するものについては、それぞれの外国人労働者の母国語(英語、中国語、韓国語、ポルトガル語等)に翻訳したものを掲示しておくことで、意思疎通の行き違い、ミスを防ぐことができます。
日本の価値観を押し付けない、自社の理念を説明する
次に、仕事に対する価値観の違いについては、それぞれの外国人の価値観を理解した上で、自社の価値観をよく説明することが重要です。
ここで、「ここは日本だから、日本のやり方にしたがってやりなさい。」という指示をする経営者をよく見受けますが、これは外国人にとって自国の文化、ひいては存在そのものを否定されたと受け取られ、必ずトラブルになりますので絶対にしてはいけません。
ポイントは、まず、外国人労働者の言い分を良く聞くことです。そして、「日本」の仕事の価値観を押し付けると「国対国」の構図に捉えられ、お互い感情的になってしまいますので、必ず「自社」の仕事に対する理念を説明することです。
「日本では、こういう考え方で仕事をしている」と説明するのではなく、「わが社は、こういう理念のもと仕事をしている」と説明するのです。
外国人労働者も、日本の考え方を押し付けられると私は外国人だから守る必要はないなどと反発しがちですが、会社の理念から丁寧に説明されると自分も雇用されている以上、耳を傾けることが多いです。
このように、外国人労働者に対しては、日本の価値観を押し付けるのではなく、自社の理念を説明することが大切です。