相続法改正|遺言制度に関する見直しを弁護士が解説

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2018年7月6日、民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律(平成30年法律第72号)が成立しました(同年7月13日公布)。

相続に関するトラブルを防ぐために、民法では、誰が相続人となり、また、何が遺産にあたり、被相続人の権利義務がどのように受け継がれるかなど、相続の基本的なルールが定められています。

この民法の相続について規定した部分を「相続法」と言います。

民法のうち相続法の分野については、昭和55年以来、実質的に大きな見直しはされてきませんでしたが、その間にも、社会の高齢化が更に進展し、相続開始時における配偶者の年齢も相対的に高齢化しているため、その保護の必要性が高まっていました。

今回の相続法の見直しは、このような社会経済情勢の変化に対応するものであり、残された配偶者の生活に配慮する等の観点から、配偶者の居住の権利を保護するための方策等が盛り込まれています。

このほかにも、遺言の利用を促進し、相続をめぐる紛争を防止する等の観点から、自筆証書遺言の方式を緩和するなど、多岐にわたる改正項目を盛り込んでおります。

この記事では、改正法のうち、「遺言制度に関する見直し」について、ポイントを詳しく説明します。

1.遺言制度に関する見直し

1-1.自筆証書遺言の方式緩和

内容

自筆証書に、パソコン等で作成した目録を添付したり、銀行通帳のコピーや不動産の登記事項証明書等を目録として添付したりして遺言を作成することができるようにします。

全文の自書を要求している現行の自筆証書遺言の方式を緩和し、自筆証書遺言に添付する財産目録については自書でなくてもよいものとします。

但し、財産目録の各頁に署名押印することを要します。

現行制度

円滑に相続を進めるには遺言書が欠かせません。

紛失や改ざんのリスクを避け、確実に遺言を残すには公正証書遺言の作成が望ましいですが、公証役場へ出向く必要がある上に、手数料もかかります。

一方で自筆証書遺言はいつでも書けて手数料もかかりませんが、すべてを自筆で書かなければならず、書式に不備があると無効になることがあります。

制度導入のメリット

今回の法改正では、自筆証書遺言のうち財産目録の部分はパソコンなどで書いても有効になりました。

これまで自筆証書遺言は、添付する目録も含め、全文を自書して作成する必要がありました。

その負担を軽減するため、遺言書に添付する相続財産の目録については、パソコンで作成した目録や通帳のコピーなど、自書によらない書面を添付することによって自筆証書遺言を作成することができるようになります。

1-2.遺言執行者の権限の明確化等

遺言執行者の一般的な権限として、遺言執行者がその権限内において遺言執行者であることを示してした行為は相続人に対し直接にその効力を生ずることを明文化します。

特定遺贈又は特定財産承継遺言(いわゆる相続させる旨の遺言のうち、遺産分割方法の指定として特定の財産の承継が定められたもの)がされた場合における遺言執行者の権限等を、明確化します。

1-3.法務局における自筆証書遺言の保管制度の創設について

2018年7月6日、法務局における遺言書の保管等に関する法律(平成30年法律第73号)が成立しました(同年7月13日公布)。

法務局における遺言書の保管等に関する法律(以下「遺言書保管法」といいます。)は、高齢化の進展等の社会経済情勢の変化に鑑み、相続をめぐる紛争を防止するという観点から、法務局において自筆証書遺言に係る遺言書を保管する制度を新たに設けるものです。

遺言書保管法の施行期日は、施行期日を定める政令において2020年7月10日(金)と定められました。

なお、施行前には、法務局に対して遺言書の保管を申請することはできませんので、ご注意ください。

内容

自筆証書による遺言書は自宅で保管されることが多く、せっかく作成しても紛失したり、捨てられてしまったり、書き換えられたりするおそれがあるなどの問題がありました。

そこで、こうした問題によって相続をめぐる紛争が生じることを防止し、自筆証書遺言をより利用しやすくするため、法務局で自筆証書による遺言書を保管する制度が創設されます。

自筆証書遺言を作成した方は、法務大臣の指定する法務局(遺言書保管所)に遺言書の保管を申請することができます。

作成した本人が遺言書保管所に来て手続を行う必要があります。

遺言者の死亡後に、相続人や受遺者らは、全国にある遺言書保管所において、遺言書が保管されているかどうかを調べること(「遺言書保管事実証明書」の交付請求)、遺言書の写しの交付を請求すること(「遺言書情報証明書」の交付請求)ができ、また、遺言書を保管している遺言書保管所において遺言書を閲覧することもできます。

遺言書保管所に保管されている遺言書については、家庭裁判所の検認が不要となります。

遺言書の閲覧や遺言書情報証明書の交付がされると、遺言書保管官は、他の相続人等に対し、遺言書を保管している旨を通知します。

2.いつから施行されるの?

相続法改正のうち、配偶者居住権及び配偶者短期居住権の新設等は、2020年4月1日です。

その他、民法(相続関係)改正法の施行期日は、以下です。

改正法の規定は、以下のとおり、段階的に施行されることとされています。

他方、遺言書保管法の施行期日は、施行期日を定める政令において2020年7月10日と定められました。

①自筆証書遺言の方式を緩和する方策

2019年1月13日

②原則的な施行期日

(遺産分割前の預貯金の払戻し制度、遺留分制度の見直し、相続の効力等に関する見直し、特別の寄与等の①③以外の規定)

2019年7月1日

③配偶者居住権及び配偶者短期居住権の新設等

2020年4月1日

3.遺言制度に関する見直しのよくある質問

今回の改正により、自筆証書遺言の方式が緩和されたとのことですが、全文パソコンで作成してもいいのですか?

全文パソコンで作成することはできません。

今回の改正では、自筆証書遺言に添付する財産目録については手書きでなくてもよいこととしていますが、遺言書の本文については、これまでどおり手書きで作成する必要があります。

どの法務局に遺言書保管の申請をすることができるのですか?

遺言書の保管の申請は、遺言者の住所地若しくは本籍地又は遺言者が所有する不動産の所在地を管轄する遺言書保管所(法務大臣の指定する法務局)の遺言書保管官(法務局の事務官)に対してすることができます。

なお、遺言書保管所の指定及び具体的な管轄については、施行日(2020年7月10日)までの間に定めることとなります。

保管の対象となる遺言書はどのようなものですか?

保管の申請の対象となるのは、自筆証書による遺言書のみです。

また、遺言書は、封のされていない法務省令で定める様式に従って作成されたものでなければなりません。

なお、具体的な様式については、施行日(2020年7月10日)までの間に定めることとなります。

遺言書の保管には費用はかかるのですか?

遺言書の保管の申請、遺言書の閲覧請求、遺言書情報証明書(遺言書の画像情報等を用いた証明書)又は遺言書保管事実証明書(法務局における遺言書が保管されているかどうかを証明した書面)の交付の請求をするには、手数料を納める必要があります。

なお、具体的な手数料の額については、施行日(2020年7月10日)までの間に定めることとなります。

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