改正民法の定型約款について解説! 判断のポイントは?

債権関係規定(債権法)に関する改正民法が2017年5月に成立し、2020年を目途に施行されることとなりました。

契約に関する規定の大半は明治29(1896)年の民法制定から変わっておらず、今回の改正は、民法制定以来、約120年ぶりに抜本改正されます。

改正は、約200項目に上り、様々な生活の場面に影響が及ぶ身近なルール変更が多いです。

その特徴は、インターネット取引の普及などの時代の変化に対応し、消費者保護に重点を置いていることです。

今回の改正では、①約120年間の社会経済の変化への対応を図るために実質的にルールを変更する改正と、②現在の裁判や取引の実務で通用している基本的なルールを法律の条文上も明確にし、読み取りやすくする改正を行っています。

改正民法(債権法)の目玉の一つが、約款に関する規定が整備されたことです。

以下、この記事では、約款について、ご説明します。

1.約款とは

約款とは、ネット通販のほか、電機やガスの契約など、企業が不特定多数の消費者と同じ内容の取引をする場合に示す契約条件のことをいいます。

約款とは、大量の同種取引を迅速・効率的に行うために作成された定型的な内容の取引条項を指します。

2.改正の背景

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取引ごとに個別に契約内容を決めると手間やコストがかさむため、鉄道やバスの運送約款、保険契約の約款などが広く用いられています。

ネット取引で、商品を購入する際などに表示される取引条件の約款が、小さな文字で書かれていて、注文時に気付かないことでトラブルになるケースが多く発生していました。

ところが約120年前に制定された現行法に約款の規定は存在しません。

これまで、民法には約款に関する規定がありませんでした。

その後の大量生産・販売型の事業の普及で、画一的な条件で取引できる約款の必要性が高まりました。

特に、近年はインターネットサービスの普及で利用規約が多用されています。

しかし、消費者の大半は詳細な内容を認識しないまま契約しているのが実態です。

約款がどのような場合に有効で、変更できるかなどを明文化する必要性が高まりました。

もっとも、「約款」という用語は幅広い意味で使われ、人によって理解が異なるおそれもあります。

法律用語とするには明確な定義が必要です。

そこで、改正民法では、ネット取引の「同意する」ボタンを押すなどして消費者が合意した場合や、契約内容として事前に約款が示されていた場合には、約款が有効であると明確化されます。

他方、消費者に一方的に不利な契約内容は無効となることも明記し、消費者保護に配慮しています。

企業は、契約内容が適正かどうか再度、確認する必要があります。

なお、合理的な事情であれば約款の変更は可能であると規定されます。

3.定型約款の定義

3-1.定義

改正民法では「不特定多数の者を相手方とする取引で、内容の全部または一部が画一的であることが当事者双方にとって合理的なもの」を「定型取引」と規定しました。

定型取引の契約内容とすることを目的に、特定の者によって用意された条項の総体を「定型約款」と定義しました(改正民法548条の2第1項)。

3-2.改正民法第548条の2

(定型約款の合意)

第五百四十八条の二

定型取引(ある特定の者が不特定多数の者を相手方として行う取引であって、その内容の全部又は一部が画一的であることがその双方にとって合理的なものをいう。以下同じ。)を行うことの合意(次条において「定型取引合意」という。)をした者は、次に掲げる場合には、定型約款(定型取引において、契約の内容とすることを目的としてその特定の者により準備された条項の総体をいう。以下同じ。)の個別の条項についても合意をしたものとみなす。

一 定型約款を契約の内容とする旨の合意をしたとき。

二 定型約款を準備した者(以下「定型約款準備者」という。)があらかじめその定型約款を契約の内容とする旨を相手方に表示していたとき。

2 前項の規定にかかわらず、同項の条項のうち、相手方の権利を制限し、又は相手方の義務を加重する条項であって、その定型取引の態様及びその実情並びに取引上の社会通念に照らして第一条第二項に規定する基本原則に反して相手方の利益を一方的に害すると認められるものについては、合意をしなかったものとみなす。

4.定型約款に該当するものは?

では、どのようなものが定型約款に該当するのでしょうか。

条文上の要件は非常に抽象的であり、改正民法の下での判例が蓄積するまで、具体的にどのようなものが定型約款に該当するか、明確ではない状況が続くものと思われます。

但し、法律の条文だけでは分かりにくいですが、国会審議などを通じて一定の解釈が成り立つと考えられます。

例えば、運送約款や保険約款のほか、電気・ガスの供給約款、ネットサービスの利用規約などが典型例だといいます。

逆に、一般的な事業者閧取引での契約書のひな型や、就業規則、労働契約書は該当しません。

改正論議の過程で経済界が強く要望した経緯があります。

ただ、住宅ローン契約書が定型約款に当たるかどうかは専門家でも意見が分かれます。

契約時に審査があり、不特定多数との取引といえるかが不明瞭だからです。

企業が約款を用いる際は、改正債権法の適用対象かどうかを殫認する必要があるでしょう。

4-1.定型約款に当たると考えられるもの

・ 鉄道などの旅客運送約款

・ 電気供給約款

・ 保険約款

・ インターネットの利用規約

・ 普通預金規定

4-2.定型約款に当たらないと考えられるもの

・ 事業者間取引の契約書ひな型

・ 就業規則や労働契約書

5.定型約款が契約の内容となる要件(みなし合意)

5-1.みなし合意の要件

顧客が定型約款にどのような条項が含まれるのかを認識していなくても、

① 当事者の間で定型約款を契約の内容とする旨の合意をしたときや、

② 定型約款を契約の内容とする旨をあらかじめ顧客に「表示」して取引を行ったときは、個別の条項について合意をしたものとみなされます(改正民法548条の2第1項)。

他方で、信義則に反して顧客の利益を一方的に害する不当な条項はその効果が認められません。

みなし合意の要件として、定型約款準備者が相手方に定型約款の内容を示すことは必要とされていません。

もっとも、定型約款準備者は、定型取引の合意の前または定型取引の合意の後相当の期間内に相手方から請求があった場合には、定型約款の内容を示さなければならないとされています(改正民法548条の3第1項本文)。

そして、定型取引の合意の前に相手方が請求した場合において、定型約款準備者が定型約款の内容の表示を拒んだ場合は、正当な事由がある場合を除き、定型約款の条項についてみなし合意の効果が認められないことになります(改正民法548条の3第2項)。

但し、定型約款準備者が相手方に対して定型約款を記載・記録した書面・電磁的記録を交付・提供している場合には、定型約款の表示義務は適用されません(改正民法548条の3第1項ただし書)。

5-2.改正民法548条の3

(定型約款の内容の表示)

第五百四十八条の三

定型取引を行い、又は行おうとする定型約款準備者は、定型取引合意の前又は定型取引合意の後相当の期間内に相手方から請求があった場合には、遅滞なく、相当な方法でその定型約款の内容を示さなければならない。ただし、定型約款準備者が既に相手方に対して定型約款を記載した書面を交付し、又はこれを記録した電磁的記録を提供していたときは、この限りでない。

2 定型約款準備者が定型取引合意の前において前項の請求を拒んだときは、前条の規定は、適用しない。ただし、一時的な通信障害が発生した場合その他正当な事由がある場合は、この限りでない。

6.定型約款の規制

定型約款の条項のうち、みなし合意の効果を認めることが不適切であるような条項については、みなし合意の対象から除外されることになります。

すなわち、定型約款の個別の条項のうち、相方の権利を制限し、または相手方の義務を加重する条項であって、当該定型取引の態様・その実情、取引上の社会通念に照らして信義則に反して相手方の利益を一方的に害すると認められるものについては、定型約款がみなし合意の要件を満たしている場合であっても、合意をしなかったものとみなされます(改正民法548条の2第2項)。

7.定型約款の変更

7-1.変更の要件

現在の実務では、事業者が既存の契約も含めて一方的に約款の内容を変更することがあります。

今回の改正では、定型約款の変更がどのような要件の下で可能なのかについて新たにルールを設けています。

定型約款の変更は、

① 変更が顧客の一般の利益に適合する場合や、

② 変更が契約の目的に反せず、かつ、変更に係る諸事情に照らして合理的な場合

に限って認められます(改正民法548条の4第1項)。

顧客にとって必ずしも利益にならない変更については、事前にインターネットなどで周知をすることが必要です。

変更が合理的であるかどうかを判断する際には、変更の必要性、変更後の内容の相当性、変更を予定する旨の契約条項の有無やその内容、顧客に与える影響やその影響を軽減する措置の有無などが考慮されます。

約款中に「当社都合で変更することがあります」と記載してあっても、一方的に変更ができるわけではありません。

7-2.改正民法548条の4

(定型約款の変更)

第五百四十八条の四

定型約款準備者は、次に掲げる場合には、定型約款の変更をすることにより、変更後の定型約款の条項について合意があったものとみなし、個別に相手方と合意をすることなく契約の内容を変更することができる。

一 定型約款の変更が、相手方の一般の利益に適合するとき。

二 定型約款の変更が、契約をした目的に反せず、かつ、変更の必要性、変更後の内容の相当性、この条の規定により定型約款の変更をすることがある旨の定めの有無及びその内容その他の変更に係る事情に照らして合理的なものであるとき。

2 定型約款準備者は、前項の規定による定型約款の変更をするときは、その効力発生時期を定め、かつ、定型約款を変更する旨及び変更後の定型約款の内容並びにその効力発生時期をインターネットの利用その他の適切な方法により周知しなければならない。

3 第一項第二号の規定による定型約款の変更は、前項の効力発生時期が到来するまでに同項の規定による周知をしなければ、その効力を生じない。

4 第五百四十八条の二第二項の規定は、第一項の規定による定型約款の変更については、適用しない。

8.まとめ

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以上、改正民法の約款(定型約款)を用いた取引に関して、ご説明しました。

改正民法では、ネット取引の「同意する」ボタンを押すなどして消費者が合意した場合や、契約内容として事前に約款が示されていた場合には、約款が有効であると明確化されます。

他方、消費者に一方的に不利な契約内容は無効となることも明記し、消費者保護に配慮しています。

企業は、契約内容が適正かどうか再度、確認する必要があります。

なお、合理的な事情であれば約款の変更は可能であると規定されます。

詳細は、弁護士など専門家にご相談ください。

 

 

 

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