民法改正「賃貸借契約」

民法改正賃貸借契約

債権関係規定(債権法)に関する改正民法が2017年5月に成立し、2020年を目途に施行されることとなりました。

契約に関する規定の大半は明治29(1896)年の民法制定から変わっておらず、今回の改正は、民法制定以来、約120年ぶりに抜本改正されます。

改正は、約200項目に上り、様々な生活の場面に影響が及ぶ身近なルール変更が多いです。

その特徴は、インターネット取引の普及などの時代の変化に対応し、消費者保護に重点を置いていることです。

以下、改正の内容である「賃貸借契約」について説明します。

賃借人による修繕の新設

改正民法により、賃借人は、建物の修繕が必要な場合、賃貸人に通知しても相当の期間内に必要な修繕をしてもらえないときは、自分が修繕をすることができます(改正民法607条の2)。

修繕は賃貸人の義務であるため、賃借人は、その費用を賃貸人に請求できます。

このような場合、その金額をめぐってトラブルになる可能性もありますので、賃貸人は必要な修繕を速やかに行うほうがよいでしょう。

 

※ 改正民法 第607条の2

(賃借人による修繕)

第六百七条の二

賃借物の修繕が必要である場合において、次に掲げるときは、賃借人は、その修繕をすることができる。

一 賃借人が賃貸人に修繕が必要である旨を通知し、又は賃貸人がその旨を知ったにもかかわらず、賃貸人が相当の期間内に必要な修繕をしないとき。

二 急迫の事情があるとき。

 

 

一部使用不能等による賃料減額

現行民法では、建物の一部が賃借人の責任によらずに一部使用不能となった場合の賃料について、その割合に応じて賃借人は減額を請求できるとされていました(現行民法611条)。

これに対して、改正民法では、建物の一部が賃借人の責任によらずに一部使用不能となった場合、その割合に応じて当然に減額になるとされました(改正民法611条)。

 

※ 改正民法 第611条

(賃借物の一部滅失等による賃料の減額等)

第六百十一条

賃借物の一部が滅失その他の事由により使用及び収益をすることができなくなった場合において、それが賃借人の責めに帰することができない事由によるものであるときは、賃料は、その使用及び収益をすることができなくなった部分の割合に応じて、減額される。

2 賃借物の一部が滅失その他の事由により使用及び収益をすることができなくなった 場合において、残存する部分のみでは賃借人が賃借をした目的を達することができないときは、賃借人は、契約の解除をすることができる。

 

 

原状回復義務の範囲の明文化

改正民法では、判例や国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」を踏襲し、賃借人に帰責事由のない損傷や通常使用による損傷について、賃借人の原状回復義務の範囲外であることを明文化しました(改正民法621条)。

これにより、敷金から差し引ける原状回復費用は、賃借人に責任のある損傷のみとなります。

①通常使用による損耗、②経年劣化、③賃借人に責任のない損傷は、賃借人の原状回復義務の範囲外であり、補修費用を敷金から差し引くことはできません。

賃借人の原状回復義務の範囲外の費用を差し引くと、敷金返還訴訟を提起される可能性があります。

 

※ 改正民法 第621条

(賃借人の原状回復義務)

第六百二十一条

賃借人は、賃借物を受け取った後にこれに生じた損傷(通常の使用及び収益によって生じた賃借物の損耗並びに賃借物の経年変化を除く。以下この条において同じ。)がある場合において、賃貸借が終了したときは、その損傷を原状に復する義務を負う。ただし、その損傷が賃借人の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。

 

 

保証人の保護

・極度額を定めない個人根保証は無効とされます(改正民法465条の2)。

・個人根保証は賃借人や保証人が死亡等すれば確定します(改正民法465条の4)。

・事業用債務の個人保証人に対して主債務者の財産状況等の情報提供義務があります(改正民法465条の10)。

 

※ 改正民法 第465条の2

(個人根保証契約の保証人の責任等)

第四百六十五条の二

一定の範囲に属する不特定の債務を主たる債務とする保証契約(以下「根保証契約」という。)であって保証人が法人でないもの(以下「個人根保証契約」という。)の保証人は、主たる債務の元本、主たる債務に関する利息、違約金、損害賠償その他その債務に従たる全てのもの及びその保証債務について約定された違約金又は損害賠償の額について、その全部に係る極度額を限度として、その履行をする責任を負う。

2 個人根保証契約は、前項に規定する極度額を定めなければ、その効力を生じない。

3 第四百四十六条第二項及び第三項の規定は、個人根保証契約における第一項に規定する極度額の定めについて準用する。

 

 

※ 改正民法 第465条の4

(個人根保証契約の元本の確定事由)

第四百六十五条の四

次に掲げる場合には、個人根保証契約における主たる債務の元本は、確定する。

ただし、第一号に掲げる場合にあっては、強制執行又は担保権の実行の手続の開始があったときに限る。

一 債権者が、保証人の財産について、金銭の支払を目的とする債権についての強制執行又は担保権の実行を申し立てたとき。

二 保証人が破産手続開始の決定を受けたとき。

三 (略)

2 前項に規定する場合のほか、個人貸金等根保証契約における主たる債務の元本は、次に掲げる場合にも確定する。ただし、第一号に掲げる場合にあっては、強制執行又は担保権の実行の手続の開始があったときに限る。

一 債権者が、主たる債務者の財産について、金銭の支払を目的とする債権についての強制執行又は担保権の実行を申し立てたとき。

二 主たる債務者が破産手続開始の決定を受けたとき。

 

 

※ 改正民法 第465条の10

(契約締結時の情報の提供義務)

第四百六十五条の十

主たる債務者は、事業のために負担する債務を主たる債務とする保証又は主たる債務の範囲に事業のために負担する債務が含まれる根保証の委託をするときは、委託を受ける者に対し、次に掲げる事項に関する情報を提供しなければならない。

一 財産及び収支の状況

二 主たる債務以外に負担している債務の有無並びにその額及び履行状況

三 主たる債務の担保として他に提供し、又は提供しようとするものがあるときは、その旨及びその内容

2 主たる債務者が前項各号に掲げる事項に関して情報を提供せず、又は事実と異なる情報を提供したために委託を受けた者がその事項について誤認をし、それによって保証契約の申込み又はその承諾の意思表示をした場合において、主たる債務者がその事項に関して情報を提供せず又は事実と異なる情報を提供したことを債権者が知り又は知ることができたときは、保証人は、保証契約を取り消すことができる。

3 前二項の規定は、保証をする者が法人である場合には、適用しない。

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