債権関係規定(債権法)に関する改正民法が2017年5月に成立し、2020年を目途に施行されることとなりました。
契約に関する規定の大半は明治29(1896)年の民法制定から変わっておらず、今回の改正は、民法制定以来、約120年ぶりに抜本改正されます。
改正は、約200項目に上り、様々な生活の場面に影響が及ぶ身近なルール変更が多いです。
その特徴は、インターネット取引の普及などの時代の変化に対応し、消費者保護に重点を置いていることです。
以下、改正の内容である「保証人に対する情報提供」について説明します。
契約締結時の情報提供
主債務者は、事業のために負担する債務を主債務とする保証について個人に委託するときは、委託を受ける者に対し、
・財産及び収支の状況
・主債務以外に負担している債務の有無、その額及び履行状況
・主債務の担保として他に提供し、又は提供しようとするものがあるときは、その旨及びその内容
の情報を提供しなければなりません(改正民法465条の10第1項・3項)。
①主債務者がこれらの情報を提供せず、または事実と異なる情報を提供したために、委託を受けた者がこれらの事項について誤認した場合で、②主債務者が情報を提供せず、または事実と異なる情報を提供したことを債権者が知り、または知ることができたときには、保証人は、保証契約を取り消すことができます(改正民法465条の10第2項)。
この情報提供義務の主体は主債務者であり、債権者が情報提供を行うことが必要となるわけではありません。
しかし、主債務者が義務違反をした場合には保証契約が取り消される可能性が生じ、債権者の利害関係にも関わりますので、注意が必要です。
※ 改正民法 第465条の10
(契約締結時の情報の提供義務)
第四百六十五条の十
主たる債務者は、事業のために負担する債務を主たる債務とする保証又は主たる債務の範囲に事業のために負担する債務が含まれる根保証の委託をするときは、委託を受ける者に対し、次に掲げる事項に関する情報を提供しなければならない。
一 財産及び収支の状況
二 主たる債務以外に負担している債務の有無並びにその額及び履行状況
三 主たる債務の担保として他に提供し、又は提供しようとするものがあるときは、その旨及びその内容
2 主たる債務者が前項各号に掲げる事項に関して情報を提供せず、又は事実と異なる情報を提供したために委託を受けた者がその事項について誤認をし、それによって保証契約の申込み又はその承諾の意思表示をした場合において、主たる債務者がその事項に関して情報を提供せず又は事実と異なる情報を提供したことを債権者が知り又は知ることができたときは、保証人は、保証契約を取り消すことができる。
3 前二項の規定は、保証をする者が法人である場合には、適用しない。
主債務の履行状況に関する情報提供
主債務者の委託を受けて保証人となった者からの請求があったときは、債権者は、保証人に対して、遅滞なく、主債務の元本及び主債務に関する利息、違約金、損害賠償その他主債務に従たるすべてのものについて、不履行の有無、残額及び履行期限が到来しているものの額に関する情報を提供しなければなりません(改正民法458条の2)。
この規定の対象は、主債務者の委託を受けた者を保証人とするすべての保証契約であり、主債務が貸金等債務か否か、あるいは、事業のために負担したものか否かにかかわらず、適用されます。
また、保証人が個人の場合だけでなく、法人である場合にも適用されます。
※ 改正民法 第458条の2
(主たる債務の履行状況に関する情報の提供義務)
第四百五十八条の二
保証人が主たる債務者の委託を受けて保証をした場合において、保証人の請求があったときは、債権者は、保証人に対し、遅滞なく、主たる債務の元本及び主たる債務に関する利息、違約金、損害賠償その他その債務に従たる全てのものについての不履行の有無並びにこれらの残額及びそのうち弁済期が到来しているものの額に関する情報を提供しなければならない。
主債務者が期限の利益を喪失した場合の情報提供
主債務者が期限の利益を喪失したときは、債権者は、個人保証人に対して、期限の利益の喪失を知った時から2か月以内にその旨を通知しなければなりません(改正民法458条の3第1項・3項)。
この通知を怠った場合の効果として、債権者は、主債務者が期限の利益を喪失した時から債権者がその旨の通知を現にするまでに生じた遅延損害金について、保証債務の履行を請求できなくなります(改正民法458条の3第2項)。
※ 改正民法 第458条の3
(主たる債務者が期限の利益を喪失した場合における情報の提供義務)
第四百五十八条の三
主たる債務者が期限の利益を有する場合において、その利益を喪失したときは、債権者は、保証人に対し、その利益の喪失を知った時から二箇月以内に、その旨を通知しなければならない。
2 前項の期間内に同項の通知をしなかったときは、債権者は、保証人に対し、主たる債務者が期限の利益を喪失した時から同項の通知を現にするまでに生じた遅延損害金(期限の利益を喪失しなかったとしても生ずべきものを除く。)に係る保証債務の履行を請求することができない。
3 前二項の規定は、保証人が法人である場合には、適用しない。