民法改正「消滅時効の完成猶予と更新」

債権関係規定(債権法)に関する改正民法が2017年5月に成立し、2020年を目途に施行されることとなりました。

契約に関する規定の大半は明治29(1896)年の民法制定から変わっておらず、今回の改正は、民法制定以来、約120年ぶりに抜本改正されます。

改正は、約200項目に上り、様々な生活の場面に影響が及ぶ身近なルール変更が多いです。

その特徴は、インターネット取引の普及などの時代の変化に対応し、消費者保護に重点を置いていることです。

以下、改正の内容である「消滅時効の完成猶予と更新」について説明します。

改正民法では、時効の進行に関する規律の整理・再編が行われています。

「時効の停止」に対応するものとして「時効の完成猶予」という概念が、「時効の中断」に対応するものとして「時効の更新」という概念が、それぞれ用いられています。

時効の完成猶予・更新の規律について、大枠は現行の時効の停止・中断の規律を維持しつつ、対象となる事由や効果が整理されています。

時効の完成猶予

完成猶予事由と時効の完成が猶予される期間は、以下のとおりです。

裁判上の請求・支払督促・訴訟上の和解・調停・倒産手続への参加(147条1項)

事由の終了時(確定判決等により権利が確定することなく終了した場合は終了後6か月が経過した時)まで

※ 改正民法第147条
(裁判上の請求等による時効の完成猶予及び更新)
第百四十七条
次に掲げる事由がある場合には、その事由が終了する(確定判決又は確定判決と同一の効力を有するものによって権利が確定することなくその事由が終了した場合にあっては、その終了の時から六箇月を経過する)までの間は、時効は、完成しない。
一 裁判上の請求
二 支払督促
三 民事訴訟法第二百七十五条第一項の和解又は民事調停法(昭和二十六年法律第二百二十二号)若しくは家事事件手続法(平成二十三年法律第五十二号)による調停
四 破産手続参加、再生手続参加又は更生手続参加
2 前項の場合において、確定判決又は確定判決と同一の効力を有するものによって権利が確定したときは、時効は、同項各号に掲げる事由が終了した時から新たにその進行を始める。

強制執行・担保権の実行・担保権の実行としての競売・財産開示手続(148条1項)

事由の終了時(申立ての取下げ・取消しの場合は、その時から6か月が経過した時)まで

※ 改正民法第148条
(強制執行等による時効の完成猶予及び更新)
第百四十八条
次に掲げる事由がある場合には、その事由が終了する(申立ての取下げ又は法律の規定に従わないことによる取消しによってその事由が終了した場合にあっては、その終了の時から六箇月を経過する)までの間は、時効は、完成しない。
一 強制執行
二 担保権の実行
三 民事執行法(昭和五十四年法律第四号)第百九十五条に規定する担保権の実行としての競売の例による競売
四 民事執行法第百九十六条に規定する財産開示手続
2 前項の場合には、時効は、同項各号に掲げる事由が終了した時から新たにその進行を始める。ただし、申立ての取下げ又は法律の規定に従わないことによる取消しによってその事由が終了した場合は、この限りでない。

仮差押え・仮処分(149条)

事由が終了した時から6か月を経過した時まで

※ 改正民法第149条
(仮差押え等による時効の完成猶予)
第百四十九条
次に掲げる事由がある場合には、その事由が終了した時から六箇月を経過するまでの間は、時効は、完成しない。
一 仮差押え
二 仮処分

催告(150条1項)

催告の時から6か月を経過した時まで

※ 改正民法第150条
(催告による時効の完成猶予)
第百五十条
催告があったときは、その時から六箇月を経過するまでの間は、時効は、完成しない。
2 催告によって時効の完成が猶予されている間にされた再度の催告は、前項の規定による時効の完成猶予の効力を有しない。

権利についての協議を行う旨の書面による合意(151条1項)

以下のうちいずれか早い時まで

  1. 合意があった時から1年を経過した時(通算で最長5年まで延長可)
  2. 合意において当事者が協議を行う期間(1年未満)を定めたときは、その期間を経過した時
  3. 当事者の一方が相手方に対して協議の続行を拒絶する旨の通知が書面でされたときは、通知の時から6か月を経過した時
※ 改正民法第151条
(協議を行う旨の合意による時効の完成猶予)
第百五十一条
権利についての協議を行う旨の合意が書面でされたときは、次に掲げる時のいずれか早い時までの間は、時効は、完成しない。
一 その合意があった時から一年を経過した時
二 その合意において当事者が協議を行う期間(一年に満たな いものに限る。)を定めたときは、その期間を経過した時
三 当事者の一方から相手方に対して協議の続行を拒絶する旨の通知が書面でされたときは、その通知の時から六箇月を経過した時
2 前項の規定により時効の完成が猶予されている間にされた再度の同項の合意は、同項の規定による時効の完成猶予の効力を有する。ただし、その効力は、時効の完成が猶予されなかったとすれば時効が完成すべき時から通じて五年を超えることができない。
3 催告によって時効の完成が猶予されている間にされた第一項の合意は、同項の規定による時効の完成猶予の効力を有しない。同項の規定により時効の完成が猶予されている間にされた催告についても、同様とする。
4 第一項の合意がその内容を記録した電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)によってされたときは、その合意は、書面によってされたものとみなして、前三項の規定を適用する。
5 前項の規定は、第一項第三号の通知について準用する。

天災その他避けることのできない事変(161条)

障害が消滅した時から3か月を経過した時まで

※ 改正民法第161条
(天災等による時効の完成猶予)
第百六十一条
時効の期間の満了の時に当たり、天災その他避けることのできない事変のため第百四十七条第一項各号又は第百四十八条第一項各号に掲げる事由に係る手続を行うことができないときは、その障害が消滅した時から三箇月を経過するまでの間は、時効は、完成しない。

時効の更新

更新事由は、以下のとおりです。

確定判決・確定判決と同一の効力を有するものによる権利の確定(147条2項)

※ 改正民法第147条
(裁判上の請求等による時効の完成猶予及び更新)
第百四十七条
次に掲げる事由がある場合には、その事由が終了する(確定判決又は確定判決と同一の効力を有するものによって権利が確定することなくその事由が終了した場合にあっては、その終了の時から六箇月を経過する)までの間は、時効は、完成しない。
一 裁判上の請求
二 支払督促
三 民事訴訟法第二百七十五条第一項の和解又は民事調停法(昭和二十六年法律第二百二十二号)若しくは家事事件手続法(平成二十三年法律第五十二号)による調停
四 破産手続参加、再生手続参加又は更生手続参加
2 前項の場合において、確定判決又は確定判決と同一の効力を有するものによって権利が確定したときは、時効は、同項各号に掲げる事由が終了した時から新たにその進行を始める。

強制執行・担保権の実行・担保権の実行としての競売・財産開示手続(148条2項)

※ 改正民法第148条
(強制執行等による時効の完成猶予及び更新)
第百四十八条
次に掲げる事由がある場合には、その事由が終了する(申立ての取下げ又は法律の規定に従わないことによる取消しによってその事由が終了した場合にあっては、その終了の時から六箇月を経過する)までの間は、時効は、完成しない。
一 強制執行
二 担保権の実行
三 民事執行法(昭和五十四年法律第四号)第百九十五条に規定する担保権の実行としての競売の例による競売
四 民事執行法第百九十六条に規定する財産開示手続
2 前項の場合には、時効は、同項各号に掲げる事由が終了した時から新たにその進行を始める。ただし、申立ての取下げ又は法律の規定に従わないことによる取消しによってその事由が終了した場合は、この限りでない。

権利の承認(152条1項)

※ 改正民法第152条
(承認による時効の更新)
第百五十二条
時効は、権利の承認があったときは、その時から新たにその進行を始める。
2 前項の承認をするには、相手方の権利についての処分につき行為能力の制限を受けていないこと又は権限があることを要しない。

 

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