厚生労働省は、医薬品などの広告基準を15年ぶりに見直します。
特定の性別や年齢をターゲットにする表現を認め、例えば、生理痛、頭痛、関節痛などに効く薬で、企業側が生理痛の効果を消費者に訴えたい場合、「女性向け」という広告表現が可能になります。また、肩こりに効く薬で「40代・50代向け」などといった表現もできるようになります。
また、広告基準による規制の対象となる媒体はこれまで明記されていませんでしたが、動画投稿サイトやスマートフォン向けアプリなど今後の広告媒体の多様化を想定し、見直しに合わせて「全媒体が対象」と明確化します。
このほか、近年外国人永住者及び旅行者が増加していることを踏まえ、2020年東京五輪・パラリンピックを控えて訪日外国人の増加が予想されることから、医薬品名のアルファベット併記を認めます。
また、「新発売」という表現の使用可能期間は、昨今の製品サイクルの長期化に鑑み、製品発売後6カ月間から12カ月間に延長します。
厚生労働省は、2017年9月下旬にも新基準を都道府県に通知する方針です。
医薬品メーカーなどの販売戦略の自由度が高まります。
うそや大げさな広告を防ぐため、厚労省は医薬品医療機器法に基づき、医薬品や医薬部外品などの広告基準を定めています。
都道府県の薬事監視員が同基準に基づき不適切な広告を取り締まっています。
新基準の内容は、主に以下と考えられます。
(パブリックコメント「医薬品等適正広告基準の見直し(案)について」の資料を参照しています。)
改正の趣旨
(パブリックコメントHP資料より)
医薬品等の広告は、他の商品の広告と異なり、国民の保健衛生上極めて影響が大きいため、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(昭和 35 年法律第 145 号)によって規制されている。さらに虚偽誇大な広告を防止し、広告の適正化を図るため、「医薬品等適正広告基準について」(昭和 55 年 10 月9日薬発第 1339 号各都道府県知事あて厚生省薬務局長通知、改正平成 14 年3月 28 日医薬発第 0328009 号)が定められ、同基準に基づき、厚生労働省及び各都道府県の薬事監視員が広告の取締りを行っている。
今般、規制改革実施計画(平成 28 年6月2日閣議決定)において、セルフディケーション市場の拡大や広告媒体の多様化を踏まえ、一般用医薬品及び指定医薬部外品に関する情報が消費者に理解されやすい広告表現によって正確かつ適切に提供されるようにするとの観点から、業界関係者の意見を聴取しつつ、当該基準で定められた事項を全般的に精査し、必要な見直しを行うこととされた。
この決定を受けて、国民ニーズや広告実態等の変化に伴い現状に対応できなくなった部分について、広告媒体の多様化等の今日的な視点を踏まえつつ、消費者保護という規制の本来の主旨に沿った形で見直すなど、所要の改正を行う。
改正の内容
(パブリックコメントHP資料より)
今後の広告媒体の多様化を想定し、当該基準の対象となる広告には、ウェブサイト等の新たな媒体など、全ての媒体における広告が含まれる旨を明記する。
消費者にとって有益な情報となるものについては、他社誹謗や優位性の強調とならない範囲で広告を可能とする。
複数の効能効果を有する医薬品等については、専門薬との誤解を招くことのないよう2つ以上の効能効果を表示することとしていたが、消費者にただちに不利益を与えるものではないことから、1つのみの表示を可能とする。
名称の記載については、近年外国人永住者及び旅行者が増加していることを踏まえ、日本語の読めない消費者にも配慮し、製品の同一性を誤らせない範囲内でアルファベット併記を可能とする。
特定年齢、性別等向けの広告表現については、消費者にただちに不利益を与えるものではないことから、他社誹謗や優位性の強調とならない範囲で可能とする。
「新発売」という表現の使用可能期間については、昨今の製品サイクルの長期化に鑑み、製品発売後6ヶ月から 12 ヵ月間に延長する。
その他所要の改正を行う。