債権関係規定(債権法)に関する改正民法が2017年5月に成立し、2020年を目途に施行されることとなりました。
契約に関する規定の大半は明治29(1896)年の民法制定から変わっておらず、今回の改正は、民法制定以来、約120年ぶりに抜本改正されます。
改正は、約200項目に上り、様々な生活の場面に影響が及ぶ身近なルール変更が多いです。
その特徴は、インターネット取引の普及などの時代の変化に対応し、消費者保護に重点を置いていることです。
以下、主な改正点を説明します。
◎ 主な改正点
・ 飲食代などお金を請求できる期間を5年に統一
・ 連帯保証人に公証人による意思確認を義務づけ
・ 約款の有効性と内容を変更できるルールを明文化
・ 法定利率を年5%から年3%に変更し、変動制を導入
・ 商品の欠陥に対し、修理や交換の負担請求も可能に
・ 意思能力がない状態での契約は無効になる
・ 賃貸マンションなどの敷金や原状回復の規定
未払い金の消滅時効を統一
これまでは、飲食代のツケ払いは1年、弁護士の報酬は2年、医師の診療報酬は3年と、業種などでバラバラの消滅時効が存在していました。
この点、「どの時効が適用されるか分かりにくい」との問題点がありました。
改正法では、原則として「権利を行使できると知ったときから5年」に統一されます。
これにより、飲み屋、スナックの経営者は、ツケ払いの時効が延びるので、支払いを請求できる期間が延びることになります。
法定利率の引き下げと変動制
法定利率は、当事者同士で利息について取り決めをしていないときに使われます。
これまでは、法定利率は、年5%で固定されていました。
しかし、低金利が続く実勢とかい離が生じていました。
そこで、改正法では、法定利率を年3%に引き下げ、3年ごとに見直す変動制が導入されます。
連帯保証人に公証人による意思確認を義務づけ
これまで、中小零細企業への融資で、事情をよく知らずに連帯保証人になった親族や知人らが自己破産に追い込まれる例が多くありました。
そこで、改正法では、このような事態を防ぐため、親族や知人など第三者が保証人になる場合は、公証人による意思確認が必要になります。
敷金返還のルールを規定
敷金や退去時の原状回復費用などをめぐるトラブルが頻発していました。
これまで、民法に規定はありませんでした。
そこで、改正法では、賃貸借の終了時に家主は敷金から未払い賃料などを差し引いた額を返還しなければならない、と明記されます。
また、借り主は原状回復義務を負うが、通常の生活で生じた傷や経年劣化については修繕費を負担する義務はない、と定められます。
約款有効性と内容を変更できるルールを明文化
約款とは、ネット通販のほか、電機やガスの契約など、企業が不特定多数の消費者と同じ内容の取引をする場合に示す契約条件のことをいいます。
ネット取引で、商品を購入する際などに表示される取引条件の約款が、小さな文字で書かれていて、注文時に気付かないことでトラブルになるケースが多く発生していました。
これまで、民法には約款に関する規定がありませんでした。
改正法では、ネット取引の「同意する」ボタンを押すなどして消費者が合意した場合や、契約内容として事前に約款が示されていた場合には、約款が有効であると明確化されます。
他方、消費者に一方的に不利な契約内容は無効となることも明記し、消費者保護に配慮しています。
企業は、契約内容が適正かどうか再度、確認する必要があります。
なお、合理的な事情であれば約款の変更は可能であると規定されます。