今後、技能実習生の人権侵害等に対する罰則が設けられるようですが、具体的にはどのような行為が人権侵害として想定されているのでしょうか。実際の罰則としては、どのようなものが考えられるのでしょうか。
技能実習法では、技能実習生の保護として、技能実習生に対する人権侵害行為等について、禁止規定や罰則を設けるほか、技能実習生による申告を可能にしています。また、国による技能実習生に対する相談・情報体制を強化するとともに、実習実施者・監理団体による技能実習生の転籍の連絡調整等の措置を講じています。
技能実習生の保護
技能実習法では、適正な技能実習を担保するため、監理団体・実習実施機関等を対象として、禁止行為、罰則等が規定されています。
(1)対象者
対象者は、以下になります。
- 実習監理者等:実習監理(団体監理型実習実施者と技能実習生の雇用関係あっせんや技能実習の実施に関する監理)を行う者またはその役員・職員
- 技能実習関係者:技能実習を行わせる者もしくは実習監理を行う者またはこれらの役員・職員
- 実習実施者等:実習実施者もしくは監理団体またはこれらの役員・職員
(2)禁止行為等
主な禁止行為等は、以下になります。
技能実習の強制
実習監理者等は、暴行・脅迫・監禁等により技能実習生の意思に反して技能実習を強制してはなりません(46条)。これに違反した者は、「1年以上10年以下の懲役又は20万円以上300万円以下の罰金」の罰則が規定されています(108条)。
賠償予定
実習監理者等は、技能実習に関する契約不履行について、違約金を定め、損害賠償額を予定する契約をしてはなりません(47条1項)。これに違反した者は、「6月以下の懲役又は30万円以下の罰金」の罰則が規定されています(111条)。
強制貯蓄
実習監理者等は、技能実習契約に付随して貯蓄・貯蓄金管理の契約をさせてはなりません(47条2項)。これに違反した者は、「6月以下の懲役又は30万円以下の罰金」の罰則が規定されています(111条)。
在留カードの保管
技能実習関係者は、技能実習生の旅券・在留カードを保管してはなりません(48条1項)。これに違反した者は、「6月以下の懲役又は30万円以下の罰金」の罰則が規定されています(111条)。
外出制限等
技能実習関係者は、技能実習生の外出その他の私生活の自由を不当に制限してはなりません(48条2項)。これに違反した者は、「6月以下の懲役又は30万円以下の罰金」の罰則が規定されています(111条)。
通報・申告窓口の整備
技能実習生は、実習実施者等の法違反等について、主務大臣に申告ができます(49条1項)。実習実施者等は、申告を理由として技能実習生に対して不利益な取扱いをしてはなりません(49条2項)。これに違反した者は、「6月以下の懲役又は30万円以下の罰金」の罰則が規定されています(111条)。
相談・連絡調整
(1)相談
主務大臣は、監理団体・実習実施者等に対して技能実習の適正な実施等を求めると同時に、技能実習生からの相談に応じ、必要な情報の提供、助言その他の援助を行います(50条)。
(2)連絡調整
実習実施者・監理団体が経営状況の悪化等により技能実習の継続が困難になった場合、技能実習生が日本で実習を継続するのが難しくなるため、転籍の連絡調整等を行う仕組みが整備されています。
実習実施者・監理団体は、以下のいずれかに該当するとき、引き続き技能実習を希望する技能実習生のために、他の実習実施者・監理団体との連絡調整その他必要な措置を行う義務を負います(51条)。
- 企業単独型実習実施者が技能実習困難時の届出を行おうとするとき
- 団体監理型実習実施者が技能実習困難時の通知を行おうとするとき
- 監理団体が上記の通知等を受け届出を行おうとするとき
- 監理団体が事業の廃止・休止の届出を行おうとするとき
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